朝摘みばら水

ばら1

ばら2モロッコ・ムゴナの香り高い朝摘みのダマスカス・ローズをたっぷり使い、ゆっくりと丁寧に蒸留したハンドメイドのばら水です。

優雅な香りとこくのある使い心地で肌を穏やかに引き締めながら潤いを与えます。

優しい香りに包まれながら、贅沢なスキンケアタイムを。

化粧水、リフレッシュウォーター、目のクールダウン、手作りコスメの基材などにも。

【商品名:朝摘みばら水】

  • 〘内容量〙:100ml
  •  〘原産国〙:モロッコ(ナイアード・モロッコ)
  • 〘全成分〙:薔薇の芳香蒸留水(Rosa damascena)

 

ばら3厳しくも豊かな自然が育むムゴナの薔薇

数多くあるモロッコの自然の恵みの中でも素晴らしいものの1つがムゴナの薔薇。厳しくも豊かな自然に磨かれ、エネルギーに満ちた「ダマスカス・ローズ」の深みのある甘さと軽やかな花の香りとその働きは、古くから世界各地の人々の憧れでした。

ムゴナの薔薇が咲き始めるのは、アトラス山脈からの雪解け水がカスバ街道の村々を潤し始める4月の中旬から。収穫の期間は短く、ほぼ20日から40日間で年によって変わります。短い収穫期間を見るだけでも、その貴重さをお分かりいただけるでしょう。

 

ばら4薔薇の収穫は、早朝の涼しい時間だけに限られます。

なぜなら太陽が高く昇り、気温が上がると、その香りはどんどん揮発し薄くなってしまうからです。

花の季節には、私達の工房に薔薇を届けてくれる契約農家の人々も、香り高い花を収穫するため一家総出で朝方の畑に出て薔薇を摘みます。

花が完全に開ききる前の八分咲きのものが最も香り高いため、この時間の花を選んで摘むことにもこだわります。

 薔薇の原型~Rosa damascena~

ばら5ばら水や精油など、薔薇の香料の原料になるのは「ダマスカス・ローズ」学名 Rosa damascena という原種に近い薔薇の1つです。

私達のばら水も、この薔薇を原料にしています。

ダマスカス・ローズは、現在一般的な園芸種の薔薇(モダン・ローズ)とは異なる、オールド・ローズと呼ばれる薔薇の仲間です。

花はピンク色で八重咲きの直径7cmほどの小さな花で、先に尖った花弁のものが多い園芸種の花とは異なり、先の丸い花弁の素朴な形をしています。

香りもモダン・ローズの軽く、紅茶のような爽やかなグリーン系に対し、蜂蜜に似た重厚で、野趣ある甘い香りが特徴です。香りそのものがとても強く、よく香り、朝のムゴナの風は薔薇の香りがするほどです。密かに粘りがある香りは力強く、自然の豊かな生命力を感じさせてくれるようです。もしも日本で、ダマスカス・ローズに似た香りを体験するとしたら、ハマナスの香りが似ています。

 ばら6自然の恵みそのものを

時間をかけて、薔薇本来の香りを壊さないようにゆっくりと注意深く蒸留し、花と水と火から私達のばら水はできます。含まれる成分は全て水蒸気蒸留によって、薔薇から抽出されるものです。薔薇の重さに対し、蒸留量を限定することで、香り高く、爽やかさに加えしっとりこくのある使用感を作っています。

その年の天候、土の状態によっても薔薇の香りは変わります。例えば、蜂蜜のような甘く濃厚な香りの年、甘さの中に柑橘が漂う爽やかな香りの年、シナモンやクローブがほのかに香る年も。私達は、自然がもたらす一期一会の香りにできるだけ忠実に、その年の香りをお届けできればと思っています。

 薔薇の香りを構成する主な成分と性質

シトロネロール    : 芳香成分。新鮮で鮮やかな薔薇の香り。抗炎症作用。

シトラール      : 芳香成分。レモンの精油の主成分、爽やかな柑橘系の香り。

オイゲノール     : 芳香成分。シナモンやクローブに含まれるスパイシーな香り。防腐効果。

ローズオキサイト   : 芳香成分。薔薇やゼラニウムに含まれるグリーンの香り。

フェネチルアルコール : 芳香成分。薔薇やヒヤシンスに含まれる香り。防腐、殺菌効果。

(※これらの成分はごく微量で、その働きはとても穏やかです。)

 

 朝摘みばら水~製造~

ばら7ムゴナの地域の人々と作ること

ナイアードのばら水は、モロッコと日本のスタッフ、そしてムゴナの村の人々が共同で作ります。薔薇の栽培、買い付け、選別、蒸留までが、ムゴナの工房で行われ、ボトリングは、マラケシュの工房で行われます。良いばら水を作るためには、良い薔薇を集め届けてくれる村の人々の協力が不可欠です。また、ばら水の製造中はスタッフもムゴナに滞在し、村の人々と同じように生活します。私達のばら水は、村の人々との関わりなくしては成り立たないものです。

本来、ベルベルの人々は結束力が強く、その社会へ入ることはとても厳しく、ムゴナでばら水づくりを始めた私達とは互いを探りあう緊張した関係でした。ムゴナでのばら水づくりを始めてもう少しで10年。この期間に、村の人々とスタッフ1人1人の思いが結ばれていく数々の出来事がありました。

地域の人々と、より深い意味での上質さを求める気持ちと、利益を分かち合い共有することで、伝統的なものづくりをこれからも繋げていきたいとナイアードは考えます。

ばら8シンプルな製造工程

ばら水の製造工程は至ってシンプル。

朝摘みの薔薇を選別し、蒸留、できたばら水をボトリングしお届けしています。

しかし、シンプルだからこそ、1つ1つの工程を丁寧な手作業で行うことにこだわります。

ばら9香りを守るために~薔薇の選別~

薔薇がもっとも多く芳香成分を含み、香り高いのは早朝。

村の人々は、この時間に限って花を摘みます。

そして朝摘みの薔薇が、私達の工房に届けられます。

薔薇の香りは、花びらだけでなく、雄しべ、雌しべの部分に特に濃厚な香りがあります。

ばら水の深みのある香りのため、私たちは、花びらだけではなく、花全体、がく、しべの部分もばら水の原料として用います。

選別作業では、香りに苦味や酸味がでないように、枯れた花や葉などを1つ1つ手作業で取り除きます。古い花や傷んだ花が多いと、酸味の強いばら水になり、葉が多いと青臭い匂いが強くなるためです。緩く閉じたまだ若い花は1つずつ手で開いて使用し、若い蕾は取り除き、工房のテラスでドライローズにします。

村の若者も選別作業に加わってくれるのですが、彼らは子供の頃から薔薇の仕事を手伝ってきているので、花を扱う手の繊細さ、丁寧さ、素早さにはマラケシュ出身者が多いナイアード・モロッコのスタッフ達も驚くこと、学ぶことが多いようです。

 透明な香りを作るために~伝統的な水蒸気蒸留~

ばら10大量に早くばら水を作るには、ボイラーを用い、高い圧力をかけて作る方法もありますが、圧力によって薔薇の香りが変わってしまいます。

私達は、圧力がかからない伝統的な蒸留器で、新鮮な薔薇の香りそのものが残るように、ゆっくりと時間をかけて蒸留します。蒸留に使う熱湯の温度が上がりすぎないように、数時間にわたり火加減を調整しつづける根気を必要とする作業です。経験を重ねたスタッフ達は、蒸留器の振動音で繊細に火加減を調整します。

1回に生産するばら水の量は、使用した花と同じ重さのみとすることを原則とし、薔薇の状態、香りを確認し、花の香りが薄い場合にはそれより少ない量のばら水を作ります。それは大体100mlの蒸留につき花を60~66輪ほど使う量になります。いわば「朝摘みばら水」には、一瓶に60輪の薔薇のエッセンスが入っていることになります。

ばら水のような芳香蒸留水は一般的に、精油の副産物と考えられていますが、モロッコやチュニジアでは、あらかじめ芳香蒸留水をつくることを目的にします。もちろん、私達のばら水も同様です。

蒸留したばら水を数日保管すると、表面にうっすらと油膜が張ります。薔薇の精油です。精油を取り分けないため、お届けするばら水には、わずかに精油も含まれることになります。

 形、模様からもモロッコの空気を感じる

ばら11~ボトル~

芳香成分が逃げないように、ガラスのボトルを使用しています。

ボトルに触れた時、花びらのデリケートな感触や、ばら水の柔らかな使用感をイメージさせるフロストガラスのボトルです。

柔らかな使用感、使用後の清々しさをイメージさせるライトブルーのラベルの意匠には、土壁のレリーフをイメージさせるモロッコの伝統的な模様を取り入れました。ラベルやパッケージからも、モロッコの空気を感じていただければと思います。

 

~化粧箱~

薔薇の町、ムゴナ周辺のベルベルの村の土壁の建造物をイメージしたパッケージです。

ガラスのボトルを守る緩衝剤の役割を果たします。

 

 朝摘みばら水~2013年製造レポート~

 

ばら12「3月に雨がたくさん降りました。

薔薇のためにも、他の植物のためにもいいことです」

4月の初め、今年の薔薇はどうかと気にかけていた日本のナイアードスタッフのもとに、ナイアード・モロッコのディレクター、ラシッドからそんな知らせがありました。

朝摘みばら水の製造はとてもシンプル。摘んだ薔薇を水蒸気蒸留し、できた芳香蒸留水をボトルに詰めるだけ。そのシンプルさ故に、農家が工房に届けてくれる薔薇の質や香りがその年のばら水の香りに大きく影響します。

朝摘みばら水の製造も今年で9年目。モロッコ・ムゴナの自然を観察し続けてきながらも3月の雨に声が躍るラシッドの様子に、ただならぬ期待を抱き始まった今年のばら水の製造でした。

4月中旬にはその期待に応えるかのように、昼は季節を先取りした暖かさだったのですが、夜は例年通りの寒さだったために昼夜の寒暖の差が激しく、花弁が茶色く傷んでしまった薔薇が多くみられる日もありました。しかし、そんな気候の中でも、契約農家が届けてくれたのは、優しい薔薇色のしっかりした花弁を持つ、柑橘系の香りが比較的強く甘い香りの薔薇でした。

その後も天候に恵まれ、暖かくなるにつれて、4月末からたくさんの薔薇が開花し、畑の薔薇色が連なっていきました。そして、5月を迎える頃には、ナイアードが1日に製造できる最大量のばら水の製造ができるようになりました。

今年の薔薇の季節を振り返ってみると、雨が少なかった一昨年、昨年に較べ多くの薔薇が咲き、ナイアードの工房にほど近い地域に畑を持つ農家もたくさんの新鮮な薔薇を届けてくれました。やはり3月の雨は恵みの雨だったようです。

ばら13農家が届けてくれる薔薇の質と同様にばら水の香りを左右するのが、製造スタッフの、1つ1つの作業を丁寧に行うことで、ムゴナの薔薇そのものの香りを届けたいと思う気持ち。

朝摘みばら水の製造は、契約農家が届けてくれる薔薇をスタッフ総出で選別することから始まります。ピーク時には、毎日300kgを超える薔薇が工房に届けられます。この300㎏の薔薇を1輪1輪目視し、香りを確認しながら選別を行うと、この作業の大切さがよくわかります。

摘んで時間が経ってしまった古い花からは、酸っぱい香りがします。また、花と一緒に届いた葉や枝からは、草のようなワイルドな緑の香り。これらの香りをできるだけ取り除き、蒸留することが、新鮮で清々しいムゴナの朝摘みの薔薇そのものの香りを作ると実感します。

鮮度の高い花からは、甘く、柑橘系の香り。さらに香りを紐解くと、花のしべの部分からは松脂に似た緑の香り。これらの香りが複雑に作用しあい、朝摘みばら水の香りを作っています。

今年は、日本で営業窓口を担うスタッフ数名がばら水づくり真っ只中のムゴナを訪れました。息もつかぬ速さで薔薇を選別するモロッコのスタッフの傍らで茫然としながら、しかし、滞在も後半になった頃には選別作業においてかなりの戦力となってばら水の製造を存分に経験しました。

毎日の選別の作業で指の先を薔薇の脂(やに)で茶色にし、モロッコの日常食タジン(先の尖った素焼きの鍋で、スパイスと肉や野菜を煮込む料理)を囲み三食を共にした数日間。

この数日間を経て、「ムゴナの薔薇そのものの香りを日本のお客様に届けたい」製造スタッフの気持ちと、そうして出来たばら水を、「製品に携わる人々や、モロッコという土地を共にお伝えしたい」営業スタッフの気持ちが交差し、融合した、今年の製造でした。

 

 変わりゆく町と人~続いていく地域の伝統~

最近の自然素材への関心の高まりから、モロッコの薔薇にも多くの興味が集まっています。

ムゴナには、以前はフランスの企業の大きな水蒸気蒸留の工房があるだけでしたが、最近は小さな工房も増えてきました。たくさんの需要が生まれ薔薇の価値が上がったことは、人々の薔薇への誇りとその文化を守っていく気持ちに繋がっています。村には、畑に新たな薔薇を植え、育てる人も現れてきました。

毎年、薔薇のピークである5月上旬にムゴナで行われるばら祭は、そのような緩やかで力強い盛り上がりを反映するかのように、今年、新しい広場に会場を移しました。前より広くなった会場ではテントを張り、ムゴナのようにカスバ街道に点々とある村々の産物を紹介する等の新しい試みも始まりました。

祭りの中では、もともとはアラブの伝統のため、ベルベルの町ムゴナで行われるのは珍しい、美しく装飾された馬に民族衣装でまたがり騎馬芸を競う「ファンタジア」も行われ、地域の人々も観光客と共に楽しみました。

そんな明るい動きのあったムゴナで作られた今年の朝摘みばら水は、3月の豊かな雨に育まれた生き生きした薔薇の香りを映した、しっかりとこくのある甘さと、深みのある松脂の香り。そして、ライムのきりっとした柑橘の香りが、その重厚さを 爽やかに引き締めます。

今年の香り、そして、ボトルの中で変化し続け、深みを増していく香りの移ろい、一期一会の香りをお楽しみください。

 豊かな素材の宝庫、モロッコ

ばら15地中海と大西洋に面した北アフリカの国、モロッコは、青と白そして光のコントラストが象徴的な街エッサウィラ、フランスの影響を受けたアールデコの白い街カサブランカ、青い陶器の街フェズ、ばら色の土壁と活き活きした緑が印象的なマラケシュ・・・、それぞれの街が鮮やかな色を持つ美しい国。古くからイスラム、ベルベル、アフリカの文化が交易によって交差し独自の文化が創られてきました。人が創り上げた文化的な魅力だけでなく、澄んだ青空、サハラからの暑く乾いた風、海からの風がもたらす優しい雨と霧、アトラス山脈の雪解け水、さまざまな気候がもたらす恵みのおかげで自然素材の宝庫でもあります。そのモロッコで、厳しくも豊かな自然と共存し、長い時をかけて培った経験を今に伝えるのがベルベルの人々です。

 ベルベルの人々の暮らし

ばら16ベルベル(自由人、高貴な人の意味)は、モロッコ等の北アフリカ一帯に暮らす先住民族です。独自の言葉、文化を持ち、それがモロッコ特有の穏やかで素朴な雰囲気を生み出す源となっています。

今も、モロッコの人口のおよそ3割はベルベルの人々で、山岳地帯や谷の川沿いに土の家の集落を作り、多くの人々が伝統的な暮らしを続けています。多くのモロッコの人が自分達の血にベルベルの血が流れることに誇りを持ち、その暮らしや歴史を、憧れを込めて話します。

ベルベルの村では、居住区域と畑の区域が分けられます。川に近い低い場所に畑を作り、それを囲むように小高い丘や谷の斜面に住居を設けます。村の一番高い場所に公共の井戸が掘られ、そこから供給される水が、畑から川まで水路を縦横に走り、人々の生活と畑の作物を支えます。

強い日差しの、乾いた土の壁の連なりを通り抜け、畑の区域へ足を踏み入れると、あたりはとたんに緑に溢れ、空気はすっと涼しく、まるで高原か豊かな緑の谷のような光景に一変します。樹木や湿った土によって生まれるひんやり冷たい空気と、居住区域の乾いた空気によって微気象が生じ、畑にはいつも涼しい風が吹いています。

畑には、様々な作物や果実が混在し、食物の他、牛の飼料用に豆科の植物に転作することで地力を高める工夫がなされ、肥料には、どこの家でも必ず飼われている羊や牛の糞が利用されています。

伝統的にパーマカルチャー※に近い農業が行われているのです。

※パーマカルチャーとは、自然と人間が継続可能な環境をデザインする手法です。

 薔薇の町、ムゴナ

ばら17ムゴナは、アトラス山脈南面を走る、カスバ街道のほぼ中間点に位置する町です。

豊かな水と一年を通して乾燥し、涼しい気候が特徴で、古くから薔薇の産地として知られた場所でもあります。

カスバ街道は、ベルベルの村が点在するモロッコの伝統が今も生きる地域で、谷沿いの土で作った伝統的な家の集落と緑濃い畑の、素朴で調和した風景が見られます。

ムゴナの人々もまた、伝統的なベルベルの村の形を受け継いできました。薔薇は緑豊かな畑の周縁に植えられますが、害獣や外部からの侵入者から他の作物を守るために植えられるため、特別な手入れはされず、自然のままに育ちます。

 ムゴナの薔薇

ばら18ムゴナの薔薇の特徴は、薔薇だけを栽培する専用の畑がないことです。薔薇は、麦等の食と現金収入を支える作物を害獣や外部から守るため、畑と畑の境界を示すために植えられた、いわば農業の副産物であり、村人自身にも香りや薬草として大切にされ、親しまれています。

かつて、ある大きな海外の企業が、薔薇を安く買おうと村の人々に強靭な圧力をかけてきました。村人達はそれに屈せず、抗議の印として薔薇を株だけ残して刈り取ってしまいました。薔薇は現金収入をもたらすものですが、村人にとって薔薇は、それ以上に豊かな実りの畑の喜びとベルベルの人々の結束と誇りを象徴する存在なのです。

現在では、畑によっては残念ながら化学肥料を用いる場合がありますが、私たちが薔薇を買い取る契約農家では、農薬はもちろん、化学肥料を使わず、ベルベルの伝統的な有機農法を追求します。

ばら水作りを始めた最初の年、私達は蒸留後の薔薇は、畑に返してもらうように村の人々に頼んでいましたが、次の年、村の人から、ムゴナでは蒸留後の薔薇を天日で乾燥させ、羊の餌にし、その糞を肥料として畑に返すのが伝統的な方法と教えられ、蒸留後の薔薇を村に分けてほしいと提案を受けました。土と花の循環の間に羊が加わることで、農業の循環系はひとまわり大きく膨らみました。

ムゴナでは羊は、食用、糞は畑の肥料、毛は織物の原料と多くのものを人に与えてくれ、犠牲祭では神に捧げる動物ともなる身近で大切な動物です。薔薇を食べて育った羊はとても美味しくなるのだそうです。

畑を垣根となって守り、土に還り作物を育て、羊を養うことで食をも支え、さらにばら水やドライローズとなって収入をもたらす薔薇。薔薇がムゴナの中で多彩な役目を担い、幸せをもたらす大切なものであることが実感できるサイクルです。

 人々の憧れ、花の中の花~薔薇~

ばら19ダマスカス・ローズの原産は、中近東周辺、またアジアとも言われていますが、薔薇はその美しさと香りゆえ、紀元前の時代からさまざまな人々の手を経て世界各地へと伝えられ、栽培される地域が広がりました。

ヨーロッパへ薔薇が到達したのは、フェニキア人によってエジプトを経てギリシアへ運ばれたのが始まりと言われています。モロッコの先住民族、ベルベルの人々は、このフェニキア人達と交易を行なっていたそうで、モロッコに薔薇が辿り着いたのも、ちょうどこの頃ではないかと想像が広がります。

古代ギリシア時代のホメロスの詩、エジプトのクレオパトラの美の秘密、ローマ皇帝の薔薇三昧のパーティなどのエピソード、インドのアーユルヴェーダ、中国の詩、お茶のレシピ、日本でも万葉集や源氏物語に薔薇は登場します。ルネサンスの画家、ボッティチェリの作品「ビーナスの誕生」で海から生まれたばかりのヴィーナスの周りに舞う花は、美を競わせるために大地の神が生み出した薔薇で、赤い薔薇は、ヴィーナスが流した血から生まれたという神話もあります。カルメンが自分の象徴とするのは赤い薔薇です。これらの物語に代表されるように官能的な美や情熱の象徴となった反面、眠り姫を守る茨の垣根や、聖女のイメージなど、清純さや清らかさ、神聖さの象徴にもなり、薔薇にはあらゆる理想の女性像や美のイメージが重ねられます。相反するイメージが読み取られるほど奥深い魅力を持ち、古代から現代まで、文化も時間をも超えて多くの人々に愛された花、それが薔薇です。

 人々に愛され受け継がれてきた香りの歴史

ばら20薔薇の香りを楽しむために、人々はあらゆる工夫をしてきました。初めは、花を水に浸けて作る香り水や、油に香りを移した香油などが主流でした。10世紀頃、科学の先駆けである錬金術の発達と共に、蒸留の技術が発達、芳香蒸留水のばら水が登場しました。

薔薇の香りをいかに捕まえるか、さまざまな方法が古くから試されたことからも分かるように、世界各地で、香水や化粧料として用いられるのはもちろんのこと、食品や薬としても古くから用いられてきました。

私達日本人にとって、薔薇は目で楽しむものという印象が強いでしょう。また、香りの楽しみも、働きも女性のもの、特別なものというイメージがあります。

しかしモロッコでは、薔薇の香りはもっと日常的で身近なもの。

アーモンド菓子や飲み物の香り付けなどに食用として、胃腸薬、目薬などの家庭用薬として、洗顔、礼拝時に体を清めるために、また、冠婚葬祭、来客をもてなす時にも、生活の様々な場面で頻繁に用いられています。男性も、礼拝に出かける時、シャワーの後等、ばら水を日常的に使います。

ナイアード・モロッコのスタッフ達は、自分たちが作るナイアードのばら水をきっかけに、もっとさまざまな場面で、日本でもより多くの人に気軽に薔薇の香りを楽しんでほしいと願っています。

 朝摘みばら水~Q&A~

問; アルコールや保存料などの添加物は入っていますか?

答; 添加物を一切使用していない、薔薇の芳香蒸留水そのものです。

アルコールの仲間の成分もごく微量含まれていますが、薔薇にもともと含まれている芳香成分です。

 

問; どのように使ったらよいですか?

答; 化粧水として毎日のスキンケアに、リフレッシュウォーター、リネンウォーター、手作り化粧品の素材などに使えます。

 

問; 以前使用したものと香りが違いますが、なぜですか?

答; 毎年同じように作りますが、薔薇の育つ気象条件により、年毎に香りのニュアンスが変わります。

また、ばら水は瓶の中でも香りが成熟し変化します。

ワインのように、その年の自然を写し、時とともに移ろい深みを増す香りを「朝摘みばら水」の魅力としてご理解ください。

 

問; 使用期限、保管方法は?

答; 使用期限は製造から2年です。

開封後は3ヶ月を目安に使い切ってください。

合成保存料を添加していませんので、直射日光を避け、冷暗所で保管してください。