気の向くままつぶやき
【アインが見た、碧い空】
【アインが見た、碧い空】
≪あなたが知らないベトナム技能実習生の物語≫
近藤 秀将 著 学而図書 発行
いつ以来だろう? ここまで引き込まれた本は ・・・
プラハの春(上下巻)春江 一也 著 この本以来だろう。
若い頃は、毎年100冊以上の本を読んでいたと思う。今は、睡眠確保が優先で、月に数冊が限度となってしまったが ・・・
一時期、速読も試したが ・・・ 一夜漬けには効率的な方法かもしれないが ・・・ 自らの経験などと照らし合わせながらこれからの人生を考える上では、速読はそぐわないと判断し、今は、どんな本も、一字一句、じっくり腰を据えて読むようにしている。
過去、一万冊近く読んだ本の中で、私にとって、最も心に突き刺さる本、それが、「プラハの春」と、今回紹介の「アインが見た、青い空」です。
共通点は、フィクションでありながら、実は、自らの体験をもとに描いた事実に近い小説であること。そして、今回紹介の本は、小説 + 著者の解説付き です。
解説は、法的なこと・その運用・実際に起こっていることなど、今まさに起こっていることを説明しながら、その対策を見据えた内容です。
この解説があるから、小説の中の問題点がより鮮明に見えてくる。
実習先企業は奴隷労働の現場。
帰国して利用できるスキルなど何もない。
日本人が嫌がり働き手のない作業を、それを担わせるために、国の制度で低所得国から体力のある若者を引き込む。
年収の何倍もの大金をブローカーに払わせた(ほとんどすべてが借金)上で、技能実習生にさせていることは政府も企業も分かっている。
日本での、実習と言う名の奴隷労働は、3年間必須。
実習先を変えることも逃げることも許されない。
逃げれば、犯罪者として刑務所に入るか強制帰国、または、外国人収容所での先の見えない収監生活が待っている。
逃げれば借金返済ができなくなるうえに犯罪者となる。
路頭に迷うのは必至。
それを分かった上で、日本企業が受け入れ先になる。
受け入れ希望企業に研修生受け入れがしやすいように、大企業や政府がバックアップする。
政府は、積極的に研修生募集をする。
ブローカーが不当なピンハネをしていることを承知の上で。
それでも、日本に来たいと思わせるような美味しい話をテンコ盛りにしながら ・・・
さてさて、「技能実習生制度」とは???
法定義だけを見れば、「美辞麗句のオンパレード」
バラ色の実習生活があるかのような錯覚を誰もが持つだろう。
その実態は???
酷い実習先では、早朝から深夜まで単純重労働を強いられ、少しでも作業が遅れれば、報酬を減額され、残業手当もカットされ ・・・ その上、寮という名の6畳6人部屋に押し込まれ、法外な寮費・食費を差し引かれ、結果として無給、なんてこともザラにある。
暴言・暴力は当たり前にあり、女性であれば性暴力を受けることも ・・・ 今の時代では考えられない ・・・ その考えられないことが現実として起こっている、それが、技能実習生制度です。
それが、隠された日本の現実です。
稀に、良心的な親切な実習先もある。
一人一部屋用意してもらえる、きちんと残業代をもらえる、会社や地域の人の輪に入れてもらえることも ・・・ そんな恵まれた環境であったとしても ・・・ 仕事そのものは、単純重労働だけで何のスキルも身に付かないということに変わりはない。
どうにも耐えきれずに逃げ出せば、身を隠して非合法に収入を得るしか生きる道がない。
それが時に、真の犯罪となることもある。
そのひとつの犯罪をことさら大きく取り上げて ・・・ 「ベトナム人犯罪が増えている」と報道される。
その犯罪をさせているのは誰なのか ・・・
そこに目が向けられることはない。
搾取を目的とした技能実習生制度、奴隷労働を前提とした技能実習生制度、
真の搾取者は誰なのか?
実習先企業が搾取者なのか???
その企業は、どうして研修生を受け入れるのか ・・・ 受け入れざるを得ないのか ・・・
単にもっと儲けたいから受け入れているのか ・・・ 否! ・・・ 受け入れなければ存続できない事情がその裏にある。
その事情を作っているものが「真の搾取者」なのだろうか???
その真の搾取者は、実習先企業を隠れ蓑に、自分は安全圏にいる。
それは、元請け企業なのか? 政府関係者なのか? そんな単純な問題ではないはずだ。
その問いの答え、それを自ら導き出せる人が育っていかない限り、構造的・組織的な人権侵害・奴隷労働は決してなくならない。
そんな問いへの答えを、みなさんも探し求めてください。
そして、みなさんなりの答えを、この小説の中から見出してください。
その答えに対する解決法に向けて、一歩踏み出す行動を始めてください。
答えも、解決法も、そのための行動内容も ・・・ あなた自身が決めることなのです。
この本には書いてありませんが、外国人技能実習生は、毎年増えています。
奴隷労働問題、人権侵害問題が持ち上がる度に、日本政府は、その場しのぎの小手先の改正をして、さらなる奴隷労働の拡大を図っている。
実習生・研修生枠を広げるたびに、天下り団体が潤う仕組み。人材派遣業界が儲かる仕組み。
その陰に、違法ブローカーが暗躍していることは、業界も政府も周知の事実。
周知どころか、積極的に利用し、時には、日本の受け入れ団体が、ブローカーに逆マージンを要求する流れも増えているという。
低賃金だけでなく、不法に寮費や食費や ・・・ 時には仕事のミスの賠償金まで ・・・ 低賃金から差し引かれても文句ひとつ言えない実習生。
不平不満を言えば、さらなる仕打ちが待っている。
それを知っているから、我慢するか逃げ出すか ・・・ 2つにひとつしか方法がなくなる。
法的には救済制度があるが、全く機能していないと言っていい。
理由は簡単だ。
仕事をする気のない天下りボンクラが高給を得るためだけに存在しているのが、研修生・実習生の救済団体なのだから。
天下りボンクラは、言うまでもなく、日本政府や虐待実施企業の側の人間なのです。
見て見ぬフリをする癖の付いてしまったほとんどすべての日本人。
誰も何も言わないことをいいことに ・・・ それを悪用する受入れ企業。
それを後押しする政府機関や高級官僚のための天下り団体。
苦しむ人を増産する悪循環の中の日本経済。
解決法はある。
それを誰がするのか ・・・
それは、誰かがしてくれることではない。
ひとりひとりの日常生活の在り方・考え方・行動がすべてのスタート。
それがどういうことなのか???
是非ともこの本を読んで、
みなさんひとりひとりの自分事として考えて・判断して・行動してください。
2024.09.23